Story 14 シンプルなのに素敵/basic just for me

Renovation Story 14

「家を建てたことを後悔したくない」

クローゼットオーガナイザーであり、子どもの野外教室(いもいも教室)の講師でもある

林智子さんからご依頼をいただいたのは、2021年のこと。

 

智子さんは当時、利便性の良い駅近のマンションにご家族3人で住まわれていて、しかもリノベーションをしたばかり。

ご依頼は新築のインテリアコーディネートだったのですが、

コロナ禍を経て色々と状況が変わり、ご両親の自宅を建て替えて、二世帯を建てることになったといいます。

 

完全分離の二世帯ではあるけれど、両親の元に戻るのはあまり気が進まない。

近くなる安心感とともに、近いからこその煩わしさ。

それを想像しての言葉だったと思うのですが、

 

ご依頼をいただいてすぐの打ち合わせで感じたのは、それ以外にもある、たくさんの不安と憤りでした。

 

建てるところは、ご両親主導で契約。

大手のハウスメーカーだったのですが、自由設計でありながら出来ないことも多い。

 

 

智子さんはずっと、パリのアンティーク小物が好きで集めてきました。

リノベーションをしたマンションはとても気に入っていて、どこか趣のある雰囲気。

 

対して、ハウスメーカーで建てる新築は、どこのモデルハウスもきれい過ぎて、好きなイメージとは少し違う。

1階がご両親世帯で、2階が子世帯。

1階ありきの2階だったため、間取りも窓位置も苦戦したのに、

今度は棚板1枚とっても、好みのものを設置するのは難しいと言われる、、、

 

メーカーの担当者さんはご両親と同世代で、感覚も違い、

 

加えて、好きな感じはあるのに、自分でも掴みきれない。

家づくりは二度目だけれど、

空間が目の前にあるリノベーションと、

形から想像をしなくてはいけない新築では、勝手が違う。

部分的なイメージはできるけれど、全体がイメージできない。

 

もうすぐ決めなくてはいけないという中で、焦りも募っていました。

 

智子さんはその頃も今も、奥多摩に通っています。

どうしても携わりたくなった、子ども向けの野外教室の講師も、

引っ越すと今のマンションよりも遠くなり、時間的な余裕はなくなるのが分かっていました。

 

自分らしく、やりたいことを続けたい。

二世帯にしたこと、引っ越したことを後悔したくない。

 

そのために、今の家よりも好きなインテリアにすること

今より時間を掛けずに、

もっと楽に家事ができるようになること

 

大きくはこの2つが、智子さんの望みでした。

 

 

掴みきれていない好みを探るために、写真を集めてもらいました。

どれが好きで、どれが違うのか、ひとつひとつ確認して、パースを描く。

 

 

パースを出したとき、ようやく住みたい家ができそうだと、感じてもらえたようです。

「ここなら住みたい」

ホッとして笑顔になった智子さんの顔を、今でも思い出します。

 

 

智子さんは、1000枚以上持っていたお洋服を捨てて、今は少ないお洋服での着こなしが得意。

お洋服を捨てる中で気づいたのは、ベースはTシャツにデニムという、シンプルなスタイルに、

バッグや靴、アクセサリーで変化を付けて楽しむのが好きだということ。

 

パースで色の組み合わせのパターンを検討し、

インテリアの好みもファッションと同じで、ずっと飽きのこないシンプルなベースが必要だという結論に。

 

けれどシンプルで素敵に見せるって、とても難しいのです。

なぜなら、表現できる要素が少ないから。

その中でも素敵に見せるためには、価格の高い・安いに関係なく、質感の良い素材選びが大切になります。

メーカーの標準品で選んだシンプルは、どうしても無機質でチープな空間になりがち。

それは、素材が空間をグレードダウンさせているからなんですね。

そうならないように、ひとつひとつを吟味しながら、大切に選んでいきました。

 

 

パッと取れた方が使いやすいし、小物を飾って楽しみたい。

食器棚は、扉付きの吊り戸棚ではなくて、オープン棚を希望されていました。

けれど、質感の良い無垢の棚板は、ハウスメーカーでは選ぶことが出来ないとのことで、

 

下地だけお願いして、棚板は後から造作家具屋さんにお願いすることに。

 

棚受けが見えないように、隠し棚受けを使って、壁に埋め込んだようにスッキリと見せています。

実は棚板を壁に埋め込むことも、メーカーでは出来ないと言われてしまい、、、

断熱材の入る外壁ではなく、内壁であるのにも関わらず、です。

私もハウスメーカーに勤めていたことがあり、アフターや品質管理の問題で、一般の工務店ではできることも、メーカー基準で「できない」を定めていることは十分に分かっているつもりでしたが、

ここまでだっけ?と、ジレンマを感じた一件でした。

 

もうひとつ、シンプルなのに素敵。を叶える大切な要素はサイズ感とバランス。

これも、お洋服と共通しています。

ブラインドの幅はもちろん、

カーテンレールの長さも、印象を決める大切なところ。

現場でひとつひとつ確認してから設置してもらいました。

 

ブラインド設置前

設置後

 

設置前

 

設置後

「窓数が多くてうるさかったかも」と言っていた智子さん

2箇所の窓を、1つのブラインドでまとめてスッキリとさせました。

 

 

カーテンやブラインドの色味も、壁紙と馴染むように慎重に色を選び、

奥多摩の自然に触れるようになって、自宅でも自然を感じたい。と、強く思うようになり、観葉植物も、既にお手持ちのものに加えて新たに購入しました。

テーブルは、ご主人の事務所で使っていたもの。

アンティークの扉をアイアンのフレームで囲って、ガラスの天板を載せたものです。

素敵ですよね^^

 

リビングダイニングと、ほどよくつながるワークスペース。

帰ってきたら、ここに必ず立ち寄り荷物を置くことで、

リビングやダイニングが散らからない仕組み。

このワークスペースのオープン棚は、アクセントにするというよりは、馴染ませるイメージ。

L型の棚受けも見えていますが、白でスッキリ。ここはハウスメーカーにお願いしてコストダウンです。

 

 

階段を登ってすぐ脇のホールに設置した洗面台

北側だけれど、トップライトのおかげで明るく開放的

3面鏡は、下台の扉のデザインが框組ということもあり、

洗面台の幅いっぱいに合わせて制作をすると、正統派でクラシカルなイメージに。

智子さんは、そこまでカチッとした高級感が好みではないと感じ、ひと回り小さくして軽やかに仕上げました。

タイルも、石のニュアンスが感じられる大人の質感ですが、

この大きさならラグジュアリーになりません。

タイルはたくさんあるけれど、イメージぴったりのタイルは意外と少ないもので、お店をめぐりにめぐって、ようやく見つけました。

 

トイレの手洗いは、洗面台と同じ面材ですが、取手を丸いつまみにして少し可愛らしく。

 

ラクを叶えてくれる洗面室には、家族分の洋服が入れられるチェストを用意して、洗濯がここで完結する仕組みに。

この収納と物干しバーのおかげで、洋服がリビングダイニングに散らかりません。

 

クローゼットは、さすがスッキリ!

これぐらいなら収まる。と、持っているお洋服の量を把握できていたため、

家づくりでは、クローゼットの収納計画が一番楽だったとか!

 

寝室には、智子さんがご自身で、好きな本やアートを無造作に並べていました。

高さがないので、広々と見える上に素敵^^

ずっと集めてきたお手持ちの本や小物も

本当にひとつひとつに雰囲気があって、

しまっているのがもったいない!

リビングに持ってきました。

photo Kanta Ushio

ご主人がお持ちだった大きなポスターを背景に、テレビの両サイドにグリーンを。

ディスプレイは、左右で高低差をつけることが素敵に見せるコツ。

ポスターを背景にすることで、立体感も出ます。

 

お子さんの受験が終わるのを待って、昨年ようやく入居した智子さん。

ブラインドやカーテンを取り付け、観葉植物を置き、棚板をつけて、小物を置いて。

少しずつ、自分好みにお部屋を整えられてきました。

 

ベースがシンプルだからこそ、これからもし自分の好みが変わったとしても、

その時々の自分らしさに合わせて、住まいを変えていける安心感や楽しみがあるとおっしゃってくれました。

 

これからも、

「やりたいことをやっていいよ!頑張って!」と、

家が、智子さんの背中を押してくれる存在であることを、心から願っています。

 

私も智子さんのことを心から応援していますし、

私の出版・クラファンへの応援メッセージも、ありがとうございます!

YOU TUBEでは、智子さん宅のルームツアー&インタビューを公開しています。

写真では伝えきれない素材感や光の動き、空間や動線を、ぜひ見てみてください^^

 

 

 

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