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Story 15 ヒュッゲの森 hygge_the_forest

あっという間に、完成から8ヶ月が経とうとしているヒュッゲの森

自分と、仲間と、そして、普段は出会わない人たちとの「対話」をテーマにしたコワーキング 兼 宿泊施設

ではあるけれど、、、

「コワーキング と 宿泊」2つの用途だけで紹介するのはなんだかもったいないほど、その建物と場所の可能性を感じていて、

オーナーの彩さんは、irodori Branding株式会社を経営

マーケティングの中でも、ブランディングを得意としているけれど、

「ターゲットを決める」「ペルソナを決める」というブランディングの基本から外れて、

どんな人が使うのか、年代や、用途もこの2つだけに絞らずに、いろんな可能性を考えて、計画を進めていきました。

 

「住む人ありき」「使う人ありき」で、いつも住宅の間取りや収納・インテリアを考えている私だけれど、

 

今回はそれがない。

でも、「想い」は強い。

強く大きな、その想いを誰よりも深く、細部まで汲み取って、建物に込めよう。

想いが深ければ深いほど、感じられるもの、表現できること、伝えたいことも多くなるのもので、

このプロジェクトは、何回かに分けてご紹介しようと考えていたのですが、大枠を今一度、集中してまとめて伝えたいと思いました。

今回は少し長くなりますが、お付き合いください。

 

 

ヒュッゲの森は、

Work & Life
暮らしと仕事がゆるやかにつながる生き方

をモチーフとして、ワーク棟とライフ棟という、2つの棟から成り立っています。

2棟がつながる部分には、ギャラリーという中間地点を設けています。

ワークとライフがゆるやかにつながると良い循環を生むということや

中庭のケヤキという、見ているものは同じなのに、

ゆるやかに、見え方が変わっていく場所でもあり

心持ちが変わると、景色も変わっていく。

日常から離れて、ここで対話をすることで、

視点が変わり、世界が変わっていく瞬間があったら嬉しい。

そんな気持ちを込めています。

 

建物には、大きく5つのコンセプトを設けました。

 

1.Core 揺るぎないものを見つける

2.synthesis 違いや多様性の受容

3.Identity 不完全な自分をまるごと愛し、信頼する

4.mindfulness 心の機微に触れる

5.my senses 自分の感覚に耳を傾ける

 

どれも、オーナーの村本彩さんが率いる、irodori社さんで大切にしていること。

そもそも、 事業の柱がオンラインであるirodori社が、 なぜわざわざオフラインの場をつくるのか。

建物を所有するという大きなリスクを背負ってまで、 届けたいメッセージは何か。

このプロジェクトが進行している最中も、irodori社は変革の真っ只中にいました。

急速に変わっていく環境は刺激的で、新しいものを産み続けることはきっと、 大変でありながら、やりがいも多いこと。

けれど、立ち止まることをしない変化の中では、真逆のものを欲する心が湧いてきたのではないでしょうか。

それは、安心と不変。

変化の中で拠り所となる、安心できる、

少し立ち止まることのできる、リアルの場。

それを欲しているのはきっと、irodori社だけではないはず。という想い。

変わっていく時代の中、変わらないものがあることの大切さ。

建物をつくるということは、不動のものをつくるということです。

もし拠り所になるような場所が、自分の中に見つかっていないのならば、

この場所があなたの帰る場所になるよ。いつでも拠り所にしてね。と、

訪れてくれる人を包み込むほどの安心を、感じてもらえる場所にしたいと思いました。

対して、仕事をする場を想定したワーク棟でのコンセプトにしたのは、

コア  Core 「ゆるぎないものを見つける」です。

私はirodori社さんでブランディングを学んだのですが、

揺るぎない私のCore、信念が見つかってからは、

以前よりさらに、突き動かされるような情熱、 内側から溢れる想いで仕事が出来るようになりました。

今、出版のクラファンにまでチャレンジできているのは、自分のコアを見つけたおかげ。

どんなに忙しくても、「何のために、誰のために、この仕事をしているのか」

それが見えていると、そのためなら。と、色んなことにチャレンジができる。

一度転んでしまった人でも、何かを抱えて生きてきた人でも、それでも折れずに、強く在れるのです。

ワーク棟では、天井の六角形の中心にある杉の磨き丸太

自分の揺るぎない芯。コアを空間から意識出来るように、

インテリアでは、少し硬さをイメージ出来る 「黒」をポイントで入れていますが、

チェアには、エバーグリーンという、深い緑色を少し多めに配色しています。
深く深呼吸ができるような、落ち着いた色です。

そしてこれは、はっきりと分かる方は少ないかもしれませんが、

ベースの壁は、情熱の赤ベースのグレージュ色に、アクセント壁には、グリーンが入ったグレーを採用しています。

はっきりと「何色」と表現するのが難しい色ですが、

irodori社には、白黒をつけない世界観があります。

どちらが正解なのか、はっきりとは分からなくても。

自分で選んだ道を、正解にしていく勇気と強さを持って欲しい。

そんなメッセージを込めています。

ワーク棟の受付には、古材と麻袋を用いたデザインのカウンターにテーブル

ライフ棟やギャラリーには、古材の棚板

次に使う場所がなければ破棄されてしまう古い材料を、リビセンさんのご協力によって取り入れています。

新しいものと古いものが融合しているインテリアは、

irodori社が大切にしている
synthesis ジンテーゼ
違いや多様性の受容」の象徴です。

また、経験や知識、積み重ねてきたものは

例え今の場所で必要とされなくなったとしても、 場所を変えればまた光り輝くことが出来る。

何ひとつ無駄になるものはない、というメッセージも込めています。

ライフ棟では、Identity アイデンティティ
「 不完全な自分をまるごと愛し、信頼する」をコンセプトに、

床材には、アイデンティティ(自分が自分であること)という名前を持つ、コルクの床材を採用しました。

コルクの床材は保温性に優れていて、手で触ったり、素足で歩くと、自分の体温が跳ね返ってきます。

じんわりと温かい自分の体温を感じながら、ゆっくりと自己対話をしてみてください。

 

実は、建材と呼ばれる建物に使われる材料は、個性のあるものは、はじかれ、捨てられています。

特に日本では大人しい木目の材料が好まれることがあり、目の荒いもの、どこか欠けているものは、利用箇所がなく好まれなかったのです。

そんな中で、コルク材は捨てる箇所を一切持たない材料です。

欠けている部分がない人なんていない。個性を大切にしてほしい。

誰にだって、傷を負っていることがあるはず。

その傷も含めて、自分です。

そして、そんなコンプレックスはあなたの最大の魅力。

色んなことを乗り越えてきたことを思い出して欲しい。

思い出したくないことも、人には言えないこともあるかもしれない。

でも、そこを乗り越えてきたその自信が、 これからのあなたの拠り所になるはず。

そんなメッセージを込めました。

山に囲まれた場所特有の自然

鳥の声や、葉が揺れる音

水の音

風の音まで意識が行き渡る場所

澄んだ空気を感じることで、心も敏感になります。

そんな環境の中だからこそ、

mindfulness マインドフルネス
「心の機微に触れられる」
空間も意識しました。

特にライフ棟では、今の心の微細な動きに敏感になれるように、ノイズを極力遮断しています。

なぜか心地いい。と感じられる空間は、細かな配慮が至る所にされてあります。

人工的な窓枠の樹脂の部分が見えないように、手前にさりげなく細い木柱を立ててもらうなどの工夫を施しました。

色彩は、心がリラックスして本音に辿り着けるように、 包み込むような優しい色合いをベースに。

ニュアンスカラーの色のつながりは、 過去の自己肯定から今・未来へのつながり・広がり・調和も意図しています。

吹き抜けを通して臨むケヤキの葉の揺らぎ、光の揺らぎ、暖炉の炎の揺らぎ。

自然のリズムに身を委ねて、ゆっくりと深呼吸をしてみてください。

夜はさらに深い眠りに向けて、照明計画も工夫をしています。

こっちだよ。と向かう場所を示す灯りの安心感

集光タイプのダウンライトやペンダントで、ドキッとするようなドラマティックな灯りを体感していただいた後は、

最後、奥のリビングで

ふわっと広がり、包み込むような灯りを。

緊張があるから、ゆるむことができる。

この強弱を意識してつくることで

リラックスする感覚を、より感じられるようになります。

「繊細に感じる心」「調和を大切にする心」

日本人としてのアイデンティティの象徴として

リビングの天井には、和を彷彿とさせるペンダントライトを。

人目を気にしてしまったり、自分より人だったり。

調和を大切にする日本の精神性の良いところが邪魔をして、なかなか自分との対話が進まない人は

この空間で、焦点を「だれか」から「わたし」にスイッチすることを意識してみてください。

自分の心に繊細に。

自分との調和がとれて初めて、人との本当の調和をとることができます。

 

最後に2階の宿泊室のコンセプト

 

my senses マイ センシーズ
「自分の感覚に耳を傾ける」

2階の宿泊室4部屋は、漢字一文字からなる「2文字の音」を名前にしています。

「Sow」

「Sin」

「Rin」

「Yui」

それぞれに、色を持たせました。

お部屋の名前から連想する色と、実際の色は、同じかもしれないし、違うかもしれません。

頭で考える感性、そして、色から感じる感覚。そんなことに意識を向けたり、

身体だけで感じることとして、枕の感覚

宿泊室の枕は、表と裏で中材の種類が違い、それに伴って寝心地も変わります。

つまり寝心地が表裏の2WAYなのですが、

その日の自分は、どちらが心地いいと感じるか

それよりも前に、その違いに気付くことができるか

そんなことも試してみて欲しいです。

宿泊室は、みんなでペイントしました。

ペイントは、壁紙よりも光を反射しやすく、光が当たる場所、時間帯によって、その色が変わって見えます。

スポットの当て方で見せ方を変えて、その人がより輝くようにブランディングをする。

irodori社が大切にしている、

良いサービスを提供している人たちを

世の中から消さないためのポリシーとリンクさせたくてご提案をしたのですが、

プロの人たちに塗装してもらうには予算がかかりすぎて、一旦は壁紙の計画に。

オーナーの彩さんから、みんなで塗るという方法をご提案していただけたことをきっかけに、

「自分たちの手が入る」ことで、建物に愛着を持ってもらえるきっかけにもなるといいな。と、セルフペイントに。

鎌倉にあるCOATさんにお声がけをさせていただき、山梨までレクチャーに来ていただきました。

ヒュッゲオリジナルのカラーも、つくっていただいています。

 

ヒュッゲの森には、オーナーの彩さんや、社員みんなが大切にしてきたもの

伝えたいメッセージや、これから大切にしたいものが、たくさん詰まっています。

けれど 「みんな違って、みんないい」

がモットーの彩さんは、 当たり前だけれど、
みんながみんな、大切にしたいものが同じだとは思っていません。

だから、この建物をつくるきっかけとなった糸島での体験を、このままヒュッゲで再現しようとも、出来るとも、押し付けたいとも、思っていなくて、、、

 

来てくれた人が日々の喧騒から離れ、 ついつい忘れがちな大切な何かを想い出させてくれる場所であったらいい。

帰った後も余韻が続き、日常のなんでもない日々を大切にできるようになる。

そんなきっかけになる場所であったら。

「自然とつながり、自分とつながり、人とつながる」

ヒュッゲの森のコアコンセプトです。

スケールの大きな自然の中では、 自分という存在が時に浮き彫りとなります。

静かな自然の中、自分と対話し、

急速に変化していく時代を生き抜くために必要な

ずっと変わらない 、自分の中にあるものを見つける空間

「つながる」「原点回帰」もキーワードとしていました。

たくさんの溢れる想いをかたちにした場所、ヒュッゲの森

私にとっても、たくさんの人とつながり、

初めて「プロが集まって、みんなでプロジェクトに取り組む一体感と醍醐味」を感じられた場所でした。

私にとっても、大切な原点回帰の場所

これからもたくさんの人の、そんな場所になることを、

そして、みんなから愛される場所として、これからも育っていくことを心から祈っています。

 

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